香川県の琴平町にある「こんぴら(金比羅)さん」は古くから信仰を集め、現在も年間約300万人の参拝者が訪れる四国を代表する観光地。
「こんぴらさん」の参道である石段の両側に土産物屋が延々と軒を連ねる風景は独特で見どころのひとつです。
周辺には歌舞伎が開催される芝居小屋や美術施設などもあって一大文化ゾーンを形成しています。
※掲載写真の撮影日は写真下に記載です。
石段登り口から大門へ
「こんぴらさん」への表参道です。一番上の写真の画面中央に石段の登り口が見えています。
この辺りを歩いているときは行きも帰りも雨だったため写真を撮れませんでした。
掲載は10年前の写真です。ほとんど変わってしまっていると思います。ごめんなさい。
奥に見えるのが大門(おおもん)。さらに古い18年前の写真ですがこの時も雨が降っていた模様。
大門の手前までは石段の両横に土産物屋などが軒を連ねるにぎやかなエリアです。
石段沿いに店が並ぶ風景は伊香保温泉や大山詣りで有名な神奈川県伊勢原市の大山などでも見られますが、規模は金比羅さんの方が大きいです。
浅草寺の仲見世や柴又帝釈天の参道が石段になっているイメージです。
国内では唯一無二の風景だと思いますがどうなんでしょう。
大門のすぐ手前で振り返ってみました。
大門で365段ってことなので、まだ本宮までの石段(785段)の半分も登ってないはずですが眼下に街並みが広がっていました。
大門から書院へ
大門の下に立って本宮方向を撮影です。
大門内側境内での営業を許された「五人百姓」と呼ばれる人たちが飴を売っています。
両側に桜並木が続く桜の馬場という比較的平らなエリアをぬけ、この石段を登ると平坦で開けた場所に出ます。
こんぴら狗「ゴン」やアフリカ象、船のスクリューや神馬舎、高橋由一館などがあるあたりです。
神馬舎に2頭いた内の1頭はサラブレッド「ルーチェ」号で、父親はまさかの1995年のJRA年度代表馬「マヤノトップガン」。
話は大きくそれますが、自分的に競馬で一番好きだったレースが「マヤノトップガン」と前年度の年度代表馬「ナリタブライアン」が戦った「阪神大賞典」。
「ナリタブライアン」は勝つか負けるかではなく何馬身差をつけて勝つかが話題になるような馬。怪我や不調があっての復活戦で、GⅡではありますが年度代表馬同士の戦い。
最後の直線では3着以下を大きく引き離して2頭のマッチレース。首の上げ下げで1位が入れ替わったりします。
最後は「ナリタブライアン」が勝ちましたが、同じ父を持つ2頭の年度代表馬のこのマッチレースはほんと何回見返したかわからないほど。20年近く経った今見ても同じように感動しますね。
ごめんなさい。興奮しすぎました。話を再び金比羅さんに戻します。
広場を離れ、石段を上がった突き当たりの右側が書院です。
客間にあたる表書院と住居的な役割を持つ奥書院などがつながった複雑な構造の建物です。
表書院および奥書院の建物は中の障壁画の一部とともに国の重要文化財。
表書院は日常的に有料で公開されており円山応挙などの障壁画(襖や壁に貼り付けられた絵)を見ることが出来ます。
で、今回ありがたいのは普段非公開の奥書院が公開されていること。
奥書院の壁を飾る伊藤若冲の「百花図(花丸図)」の修復が終わったということで9年ぶりの特別公開です。
今回は期間限定ですが、これからは公開される機会も増えるんじゃないでしょうか。そうあってほしいものです。
写真も添えて紹介できればいいんですが、建物内での撮影は一切ダメってことなので言葉だけでの説明になります。
若冲は江戸時代中期の京都の画家で、少し前には美術の世界で一大ブームとなった人。NHKのドラマにもなったのでご存じの方も多いはずです。
幼少期を京都で過ごした第10代別当の絵の師匠が若冲だったそうで、そのご縁で描いてもらったものだそうです。
※別当は江戸時代以前の役職名で、神社に属しつつ仏教儀礼を行う僧侶のことで当時の金比羅大権現の最高責任者です。明治の神仏分離以降は神社の名称は金刀比羅宮に変わり、別当の役職は宮司に置き換わりました。
「百花図」が描かれた6畳ほどの部屋は別当のプライベートスペース。部屋の四方(壁・襖)にはびっしりと花の絵が描かれています。当時は白地の紙に描かれていたようですが、後に金砂子(金箔を粉にしたもの)で加工されたそうです。白地だった時のものもどんな感じだったか見てみたいものです。
本宮へと向かいます
書院前からの石段を登ったところに木製の馬が飾られています。
すぐ横の階段を下ると「神椿」という資生堂パーラーが運営するレストランがあります。
神社の境内奥深くに資生堂パーラー? かなりの不思議スポットです。
さらに石段を登りどんどん進んでいくと、目の前にドーンと現れる立派な建物がこの「旭社」です。
神仏分離以前は金堂で薬師如来や十二神将を金比羅大権現としてお祀りしていたみたいです。
ここを本宮と勘違いしてほっとする人もいるみたい(江戸時代に清水次郎長の代参でやってきた森の石松も勘違いしてここで引き返してしまったそう)ですが、本宮はもう少しだけ先です。
あと、プチ情報ですが本宮へ向かうときにはこの「旭社」前を素通りし、本宮をお参りした後に参拝するのが習わしだそうです。
「旭社」前を通り過ぎてすぐのところで見かけた石垣。この隙間のまったくない石組み、すごくないですか。
「本宮」へと続く急な石段。この133段を登りきった先が多くの人にとってのゴール「本宮」です。
本宮。御祭神は大物主神と崇徳天皇です。
海上交通の神様として知られ、関係者からの信仰を集めています。
全国に約600ある金刀比羅神社、琴平神社、金比羅神社の総本宮です。
本宮前からの眺望。
中央の山は讃岐富士「飯野山」。天気が良ければ瀬戸大橋もはっきりと見ることができます。
本宮周辺は山の中腹ですがかなり開けた空間で、さまざまな建物や施設があります。
登り口から本宮まで石段で785段。ほとんどの人はここで引き返しますがさらに先、石段1386段目の山中には奥社が鎮座します。
この先は行ったことがありませんが、体力に自信のある方は挑戦してみてください。
旧金毘羅大芝居(金丸座)
1835年に建てられた日本最古の芝居小屋。国の重要文化財です。
入口付近に掛かっていた役者絵。
ここ数年は工事やコロナの影響で開催が見送られていますが、来春には「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が開催されることと思います。
歌舞伎にあまり詳しくないような人でも知っているようなビッグネームの役者さんが毎回多数出演します。
入口前の広場には三越などの出店が出てお弁当やグッズなどを販売していたような記憶があります。
枡席はかなり狭そうですが、お弁当を食べながらの芝居見物、楽しそうです。
例大祭
例大祭は神社にとってもっとも重要なお祭りで、さまざまな祭事が行われます。
なかでも10月10日は神様が町に下りられる「お下がり」の日で、本宮から御旅所に向けて神輿の渡御などが行われます。
馬や御輿などとともに、数百人の大行列が闇の中をゆっくりと進む重要な行事です。
当日、沿道に宿をとってのんびり見物できたら楽しそうですね。
まとめ
「こんぴらさん」は古くから信仰を集め、現在も年間約300万人が訪れる大観光地です。
見どころは多いですが、一番はやはり参道の石段周辺の景色ではないでしょうか。
石段沿いにこれだけの規模で店が立ち並ぶ風景は国内のどこにもないはずです。
加えて、美しい建築物や数多くの美術品がたくさんこの山中には存在します。
四国を代表する観光地で、日々たくさんの人が行き来する中で、聖と俗、自然や芸術などさまざまな要素が混在する土地。何か底知れないパワーを感じるのは自分だけでしょうか。
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