新居浜市美術館(あかがねミュージアム)
「木村伊兵衛 写真に生きる」展の紹介と感想です

新居浜市で開催された写真家・木村伊兵衛の写真展に行ってきました。

会場は新居浜駅のすぐ横、あかがねミュージアムの2階にある新居浜市美術館。

新居浜では非常に珍しい著名な写真家の大規模な写真展。

写真評論家・飯沢耕太郎氏による講演会にも参加してきました。

木村伊兵衛 写真に生きる

🔸会場:新居浜市美術館(新居浜市坂井町2丁目8番1号 あかがねミュージアム2階)

🔸会期:2026年4月25日〜6月21日

※巡回展(秋田県立美術館→土門拳記念館→砺波市美術館→東京都写真美術館→北海道立釧路芸術館→広島県立美術館→新居浜市美術館)

展覧会の会場へと向かいます

会場は新居浜駅のすぐ横にある複合文化施設あかがねミュージアム内の新居浜市美術館。

建物のすぐ北側にあるのが「第1北駐車場」。

駐車場はいくつかあるみたいですが、こちらが一番便利そうです。

2015年オープンの「あかがねミュージアム」は地下1階地上3階の複合文化施設で「新居浜市美術館」はその一部。

“あかがね”というのは銅のことで、建物の外壁にはびっしり銅板が張られています。

入口そばに貼ってあったポスター。木村伊兵衛が自身を撮影した一枚です。

1階の受付で写真展の入場料を支払った後、建物中央の階段で写真展の会場である2階へ向かいます。

展覧会パンフレット

展覧会にて

展示は1章から3章までと4章から7章までの2つの会場に分かれていて、作品点数は全部で167点。

作品数多めのかなり立派な写真展。作品の撮影は不可だったので文字だけでの説明になります。

※下記の写真6点はすべて展覧会パンフレットからの引用です。 

第1章 夢の島ー沖縄(12点)
那覇の市場、本通り、沖縄(1936)

1935年に東京で見た琉球舞踊がきっかけで興味を持ち沖縄を訪問した際に撮られた写真。

女性のポートレートや市場の風景や墓地の写真などがありましたが、写真の技術がどうこうではなく、被写体の独特さ強さに目を奪われます。

第2章 肖像と舞台(20点)

著名な作家や画家、女優などの写真が展示されています。泉鏡花撮影時のエピソードや永井荷風の飄々とした写真の面白さなどが印象に残りました。舞台の写真もありましたが当時は低感度のフィルムしかなく撮影には高い技術が必要だったみたいです。

第3章 昭和の列島風景(40点)
本郷森川町、東京(1953)

東京の下町でのスナップを中心とした作品群に最も木村伊兵衛らしさを感じるような気がしました。

情報量多めで若干うるさく感じる写真が多いんですが、そういう状況下で光の具合や構図などを見極めながら自身の美意識で時代の空気感を切り取るというのが木村伊兵衛のスタイル?なんてことを思いました。

第4章 ヨーロッパの旅(21点)

場所柄かすっきりした感じ、洗練感強めの写真も登場したりするんですが、やっぱり下町の風景にも目が行くようでらしさは変わりません。ブレッソンを撮った1枚は写真嫌いの彼を隠し撮り的な感じで瞬間的に撮ったものだそうです。

第5章 中国の旅(12点+特別展示17点)

中国へは1963年から1973年にかけて計5回訪問。訪中撮影団の代表だったみたいです。

特別展示の17点は生前に開催されたニコンサロンでの個展に出品していたものだそうです。

第6章 秋田の民俗(24点)

秋田は1952年から1971年までの20年間に21回訪問、撮影したフィルムの本数は391本。

県展の審査で秋田を訪問した際に案内された農村の風景に強く魅了されたことがきっかけなんだそうです。

板塀、追分、秋田(1953)

板塀と馬の尻を捉えたこの1枚は当巡回展が東京都写真美術館で開催された際パンフレットのメイン写真として使用された作品。

独特な佇まいの板塀を背景に静けさの中に響くひづめの音。土地の空気感に加え時間の経過も想起させる作品です。

様々なメディアで木村伊兵衛を紹介する際によく使われる作品でもあり、彼の代表作と言っていいかもしれません。

今回の展覧会のパンフレットの写真も秋田シリーズの1枚。

モデルは1952年当時の地元の高校3年生。おばこコンクールで入賞した女性の写真をアサヒグラフで見た木村が気に入り、秋田まで出向いて撮影したものだそうです。

第7章 パリ残像(20点)
ミラボー橋、パリ、フランス(1955)

日本でカラーフィルムが一般化したのは1970年頃からで、この作品はそれよりも随分前に撮影されたものです。当時のフィルム感度はASA10だったみたいです。

自写像(1点)
一眼レフのライカを持った自写像、木村伊兵衛(1965)

木村伊兵衛について

木村伊兵衛(1901-1974)は戦前戦後期に活躍した写真家。

1929年に霞ヶ浦に飛来した飛行船の船長が首に下げていたライカに触発され、翌年小型カメラ・ライカを購入。小型カメラを駆使し、演出を好まず自然な感じで被写体を切り取るスタイルの写真で名声を得て、時代を代表する写真家に。

肖像や街の風景の他に、報道や舞台、広告など様々なジャンルの写真で活躍しました。

東京下谷(現在の台東区)の生まれで、同郷の写真家には桑原甲子雄(1913 – 2007)、濱谷浩(1915 – 1999)、荒木経惟(1940 -)がいます。

「木村伊兵衛賞」について

“木村伊兵衛”という名前は本人そのものよりも、写真界の大きな賞である「木村伊兵衛賞」で知っているという方が多いかもしれません。

「木村伊兵衛賞」は朝日新聞社・朝日新聞出版主催の写真賞。

「アサヒカメラ」での仕事を通じて朝日新聞社と親しい関係にあった木村伊兵衛ですが、その死の翌年に氏の写真界における多大な貢献を記念して創設されました。

位置付けや知名度・影響力の点などが文学における芥川賞とかなり似ている感じで、新人賞的な賞ではあるんですが写真界で一番大きな賞と言って差し支えないと思います。

飯沢耕太郎氏の講演会とギャラリートーク

5月24日10時からの記念講演会に参加したんですが、想像以上に人が入っていてびっくり。

割と地味なテーマかなと思ったんですが、みんな目的は何? 写真好き? 木村伊兵衛ファン?

前半は木村伊兵衛についての説明で、後半は大きくスクリーンに映し出した写真について説明していくというやり方。

人となりや土門拳との関係、作風の特徴など興味深く聞かせていただきました。

写真の説明になると熱が入ってきて、予定の時間をかなりオーバーして終了です。

その後は展覧会の会場で写真を見ながら説明をするギャラリートークというイベントに。数十人が飯沢さんと一緒に会場内を移動するという不思議な光景でした。

飯沢さんは、仕事量や影響力など30年以上前から現在までずっと日本のトップを走り続けている写真評論家。四国で話を聞ける会はとても貴重なんです。

ラフな感じで質問などできる場を設けてもらったら嬉しかったんですが流石にそれは無理な相談?

感想

新居浜で著名な写真家の展覧会が開催されるのは非常に珍しいことで、

自分が覚えている限りだと、過去に開催されたのは郷土美術館時代の白岡順さんの展覧会くらい?

木村伊兵衛さんといえばかなり昔の人の印象でしたが、

実際は幕末期以降に大きなカメラを三脚に据えて撮影する時代が長く続いた後、小型カメラが登場した時代に活躍した人物。

これまでになかった新しい道具・小型カメラを使いこなし、演出を加えないスナップ写真というスタイルで一時代を築いたことを評価されているんだと思います。

ただ、作品自体で言うと木村伊兵衛の写真は自分の守備範囲外。

昔の写真家で言うと木村伊兵衛以前に一時代を築いたピクトリアリズムの時代、その中心的な写真家である福原信三などのほうによりシンパシーを感じてしまいます。

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