徳島県三好市井川町辻は吉野川沿いにある小さな町。
徳島市のあたりからだと上流方向へ約60km、池田からだと約5km下流の場所にあります。
かつて刻み煙草の取引などで栄えた町で現在でも随所に当時の名残を見ることができます。
辻地区の中心部にある「勇楼旅館」での宿泊記と周辺の町並みをあわせて紹介させていただきます。
「勇楼(いさみろう)旅館」
前の道路付近から見た「勇楼旅館」です。
中央の建物が本館で、右奥に見える建物が別館です。
看板のすぐ奥のあたりが入口になります。
西側に回り込んだところに立派な門がありますが、現在は使われてないようでした。
玄関のわきに飾られていた紫陽花。
宿泊する部屋へと向かいます
玄関から正面奥に向かって板張りの広い廊下が伸びています。
突き当たりを左に曲がり、2〜3歩進んだところで右に曲がると次の写真の廊下に出ます。
ここからが別館で、廊下の両側が客室になっています。
今回泊まらせていただいたのは、一番手前で庭に面した部屋。
廊下との間にはガラス戸があるだけ。鍵はかかりません。
廊下側の壁にはひょうたん型の窓(?)。
デザイン性の高い、かなり手の込んだ造りです。
部屋に入ってすぐに出てきた、飲み物とお菓子のセット。
こちらの宿にお世話になるのは4回目くらいだったと思いますが、不思議なことにいつも2種類の飲み物が用意されていた気がします。
この日の飲み物は、自家製のしそジュースと緑茶でした。
部屋に入ってしばらくした後、追加で庭の紫陽花を床の間にいけていただきました。
本館2階の部屋を見学させていただきました
玄関のある本館の建物は、明治後期頃のものだそうですが、
旅館になる前は刻み煙草の商売をされていた方のお屋敷で、2階の部屋では商談などが行われていたそうです。
旅館になって以降は、婚姻時に両家の顔合わせの場所などとしても利用されていたそうです。
階段を上がった所にある、座敷より少しだけ低い位置にある不思議な空間。
食事を出す場合など、一旦この場所を置き場にしてその後まとめて部屋へ運び込んだりしていたとのこと。
ちょっとびっくりするような細工の細かさ、豪華さです。
違い棚の段数はこの場合何段でカウントするんでしょう。4段?
明かり取りの窓など、斬新なデザインだと思います。
襖の引手や障子のデザイン、欄間などなど、
見れば見るほど製作者のこだわりが伝わってくるような気がして
じわっとテンションが上がってくるのを感じます。
この2階の部屋は本当に見所だと思うので、
興味のある方は女将さんに一声かけて案内していただきましょう(多分快く引き受けていただけるはず)。
本館の2階から別館を見てみました。
ちなみに、今回宿泊したのは1階手前のすだれがかかっている部屋です。
新館2階の大広間です
帰り際、荷物を持って車へ向かおうとした時、女将さんから別館2階の大広間の写真は撮らなくていいか聞かれたので、迷うことなく案内をお願いしました。
とにかく広い!
具体的な数字を確認するのを忘れましたが、他の方がブログに書かれているのを見ると60畳あるそうです。
さまざまな宴会に使われてきたそうですが、時代の変化もあって最近はほとんど使われることがないそうで寂しい限りです。
本館と同様とまではいきませんがこちらもかなり凝った造りになっていて、
例えば、天井の照明を吊るしている部分が独特なデザインになっていて、写真ではわかりにくいですが換気用の窓がついていたりします。
天井ですが、外側で違う材質の板を使っている部分が増築した部分だそうです。
部屋を拡げる必要があるほど繁盛してたということですね。
大広間から北側方向の眺望です。
天気が良ければ箸蔵寺のロープウィが正面に見えるとのこと。
その他旅館内の設備について
お風呂は別館の一番奥のあたりにあります。
家庭用のようなお風呂ですが、浴槽、洗い場とも一般のお宅よりはやや広めで、
2人くらいなら同時にゆったりと入浴できると思います。
別館の奥にあるレトロ感あふれる洗面所です。
夕食について
勇楼旅館では食事をする場所を選ぶことができます。
これまでの滞在時は、朝食夕食とも自分の部屋でいただいていましたが、
今回初めて上記の写真の部屋(玄関から入ってすぐ右側の部屋)で食事をいただきました。
今回宿泊時の夕食です。
蓋のついた器を開けてみると、お煮しめでした。
過去にいただいた夕食
夕食はメイン級の食材がふた皿(今回なら鮎の塩焼きとカツオのたたき)くらいあって、
他に天ぷらや煮物、酢の物、半田そうめんに季節のフルーツといったパターンが多かった気がします。
特別な派手さはありませんが、量も十分だし、料理旅館を名乗るだけあってじわっと美味しいんです。
特に煮物や酢の物などの脇役メニューが侮れない美味しさで、場合によってはメインの食材を超えてるかもって感じすらします。
また、希望者にはご近所の酒蔵(芳水酒造)の冷酒なども出していただけます。
時々、コンビニ弁当持参素泊まりで宿泊される方もいらっしゃるようですが、
大きなお世話かもしれませんがもったいないと思います。
朝食について
朝食も特段珍しいメニューが出るわけではありませんが、
定番メニューがずらりって感じで、夕食同様ご飯が進みます。
勇楼旅館の周辺をお散歩
商店や商店跡がずらりと続く、昔は賑やかだったんだろうなーって感じの旧街道沿いの町並みです。
30分もあれば見て回れるくらいの範囲ですので、明るい時間帯に宿に到着した方は、ふらっと散歩してみることをおすすめします。
西側へ(旅館から約200m地点まで)
道路から延びる神社の石段の両脇をレトロ感あふれる住宅が固めるっていう、
自分的にはなかなかに衝撃的な風景との出会いでした。
神社の石段のすぐ脇でお休み中の猫。
東側へ(旅館から約400m地点まで)
旧四国銀行辻支店の建物。地域の近代化を象徴する建物だったとのこと。
現在は茶園を経営する会社が入っています。
旧街道を吉野川の方に曲がり「立川酒店」前の道を進むと、
国道192号をトンネルで潜り「辻の渡し」があった場所へと続きます。
旅館からは約200m、ご近所にある酒蔵「芳水酒造」。
全国新酒鑑評会での金賞受賞多数、JALの国内線ファーストクラスで純米大吟醸が採用されたりしたこともある蔵。
右側の建物にある事務所でお酒を購入することができます。
旅館から旧街道を東側に400mほど進んだあたり。
家並みの向こうに、ひときわ大きい美濃田大橋のケーブルを支える塔が見えています。
吉野川にかかる吊り橋「美濃田大橋」です。
橋の南側では、橋が終わるとすぐJR徳島線、ほとんどスペースなく国道192号線っていう、
滅多に見ない橋と鉄道と道路の位置関係です。
橋中央の車道は車1台分の幅しかないため、
橋を渡る車は、列車が通過中で踏切が閉まっている時はもちろん、反対側からやってくる車が見えた時もこのわずかな駐車スペースで待機しなければなりません。
橋の両側にこのような歩道が設けられています。
美濃田大橋の上から吉野川の上流方向。
画面中央付近がかつて「辻の渡し」があった場所。
辻地区は周辺の地区から集まってきた煙草などの産物を輸送する際の物流の拠点だったみたいです。
まとめ
「勇楼旅館」の利用は今回で多分4回目だと思います。
初めて訪れたきっかけは例の旅行支援。宿泊料金が安くなった上に、国と県の両方から金券がもらえて実質的に宿泊費がほぼ無料になっていた時期です。
さまざまな宿を利用しましたが、立地条件(朝食後仕事開始時間までに新居浜に戻れる)、食事の美味しさ、居心地の良さなどからすっかりリピーターです。
女将さんと料理担当の息子さんの2人で経営されているこぢんまりとした宿で、
雰囲気的には田舎のおばあちゃんの家に泊まる感じっていうとわかりやすいかと思います。
部屋に鍵などはなくて、酔っ払った人や寝ぼけた人が間違って部屋の扉を開けたりなんてこともないとは言い切れような環境なので、きっちりとプライベートスペースを確保したいってタイプの方は避けた方が無難かもしれません。
ただ、色々書かせていただいたように魅力も多い宿です。こういうゆるい感じが嫌いじゃない、興味があるって方はぜひ訪問して食事付きで宿泊されることをおすすめします。
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