2023.1 東京で美術展4本をみた

① 山種美術館  「日本の風景を描く ―歌川広重から田渕俊夫まで― 」展

江戸時代から現代まで、日本画家・洋画家による日本の風景を描いた作品の展覧会です。

ビッグネームがズラリと並ぶ展覧会で、出品点数は全部で62点。内5点を除く57点はすべて所蔵作品ですが撮影できるのは1点のみ。その1点もスマホやタブレット、携帯電話はOKだが一眼レフなどでの撮影は不可とのこと。カメラの持ち込みは諦めました。

この日気にいった作品をピックアップ。勝手に7点を選ばせてもらいました。

●横山 操「越路十景 蒲原落雁」1968年

●石田 武「四季奥入瀬 秋韻」1985年

●田渕 俊夫「輪中の村」1979年

●東山 魁夷「白い壁」1952年

●正井 和行「庭」1971年

●小野 具定「白い海」1974年

●木村 光宏「兆」1997年

戦後の日本画ばかりになってしまいました。今の自分はこんな感じが好きなんだなぁ。

10年後くらいにもし同じ作品を見る機会があったとしたら、多分現在とは全然違うセレクトになるだろうし、それが進歩なのかそうでないのかはわかりませんがそういうのも美術鑑賞の面白いところですね。

あと、この日印象に残ったのが石田 武さんの作品に添えられたコメント。4点出品されているうちの2点のコメントで、以前スケッチに来た時に見落としていた風景(「四季奥入瀬 瑠璃」に描かれた木)があったことを反省したり、構図を模索していろいろチャレンジするが上手くいかず実際にはない風景(「四季奥入瀬 幻冬」)を描いちゃいましたみたいなコメントは人間味が溢れてて大好物です。

② アーティゾン美術館  「石橋財団コレクション選」展

今回は所蔵作品約3000点の内の46点(特集展示「Art in Box – マルセル・ドュシャンの《トランクの箱》とその後」は除く)が展示されていました。

お気に入りの作品をいくつか紹介させていただきます。

アンリ・マティス「コリウール」
草間彌生「無題(無限の網)」
ピエール=オーギュスト・ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」
ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」

ここから6点がモネ。今回の展覧会ではアーティゾン所蔵のモネの油彩が全点登場です。

クロード・モネ「睡蓮の池」
クロード・モネ「黄昏、ヴェネツィア」
クロード・モネ「雨のベリール」
クロード・モネ「アルジャントゥイユ」
クロード・モネ「アルジャントゥイユの洪水」
クロード・モネ「睡蓮」

で、ですね、この最後の作品、1903年の睡蓮が好きなんです。お気に入りの作品が多いアーティゾンの中でもちょっと特別な存在で、この絵の前で過ごす時間が圧倒的に長いですね。

モネの作品は睡蓮だけに限っても西洋美術館や大原、大山崎など国内10数カ所で見ることができます。家から一番近いにも関わらず未だ縁のない地中美術館の作品など、まだ見たことがない睡蓮も多いですが今までに見た約10点の中ではこの作品が一番好きです。

睡蓮の作品の中では小ぶりな方だと思います。パステル調の明るい作品で、穏やかで優しいイメージの作品。赤・青・白・黄・緑・紫・ピンクなど様々な色が濃淡ありながら複雑に重なりあって本当に美しいです。

でも、この作品の一番の魅力は構図ですね。かなりの変化球です。画面の左下半分は水面で、もちろんいろいろ描かれてはいますが基本余白です。画面上からは柳の枝が垂れてきていて、一見何の変哲もないうっすい絵のように感じられなくもないんですが何か惹かれるんです。安定感があるような気もするし、同時に浮遊感、不安定感も感じられる気がします。心地よさと同時にふわふわザワザワも感じる不思議な作品です。

上の睡蓮の中央部分の拡大です。画集やネットの小さい画像ではほとんどわからない実物の雰囲気を少しでも感じていただけたらと思います。

ヴァシリー・カンディンスキー「自らが輝く」

自分のその時々のアーティゾンお気に入りTOP10に必ず入ってくるカンディンスキーの作品。難しいことはまったく分かりませんし興味もないですが、揺るぎない安定感を感じて好きな作品です。

パウル・クレー「島」

この作品も同じくアーティゾン自分TOP10の常連メンバー。まったくわからないようでいて、すっごくわかるような気もする不思議な作品。伸びやかさ、明るさを感じる楽しく心地よい作品です。

※掲載の写真はすべて展覧会場で撮影させていただいたものです。

③ 東京国立近代美術館  「MOMATコレクション」展

幅広いコレクションを誇る国立の美術館。

当日気になった作品をいくつかご紹介です。

岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」
村山槐多「バラと少女」
松本竣介「Y市の橋」
藤田嗣治「哈爾哈河畔之戦闘」
山下菊二「あけぼの村物語」
左:ロバート・アダムズ「コロラド州デンバー、ブロードウェイ」 右:ロバート・アダムズ「コロラド州ボールダー郡、コットンウッドの葉」
リー・フリードランダー「ニューオーリンズ」
富岡鉄斎「花桜人武士図」
元永定正「作品」
 左:柴田敏雄「日本典型」より 静岡県静岡市  右:柴田敏雄「日本典型」より 宮崎県西都市
松本路子「草間彌生 画家、造形作家 東京」
松本路子「平沢淑子 画家 パリ」

※掲載の写真はすべて展覧会場で撮影させていただいたものです。

④ 森美術館  「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」展

森美術館は高層ビルの53階で、会田誠や村上隆、昨年のChim↑Pomなど話題性の高い展覧会を次々に開催するとっても元気な美術館です。展示内容はもちろんですが、何よりありがたいのが月曜開館なこと。月曜日を絡めてしか東京に行けない自分としては国立新美術館とともにとってもありがたい存在です。

3年に一度開催される「六本木クロッシング」。日本のアートシーンの現在を紹介するシリーズで、今回は22組のアーティストが参加です

ジャンル、手法もさまざまで、バラエティーに富んだ楽しい展覧会です。撮影OKだった展示のうちいくつかをご紹介です。

O JUN
「美しき天然」2019他展示風景

会場へ入ってすぐ、最初の展示です。明るい色合いの作品たち。個性を強く感じ、同時に絵にも強さを感じました。

青木 千絵
「body」シリーズのうちの1点

体の一部が溶けていくようなインパクトのある造形。漆を使った光沢感のある作品。写り込みも作品の一部?

金川 晋吾
「長い間シリーズの一部 2010-2020
「長い間シリーズの一部 2010-2020

長年行方不明で、発見時には記憶のほとんどを失っていた叔母のポートレート。柔らかい光の中、静かでやさしい写真。

横山 奈美
「Shape of Your Words」シリーズの一部 2022

知人に書いてもらった手書きのLoveの文字を元にネオンを作成。それを写実的に描いた絵画作品です。作家はこれを肖像画としてとらえているとのこと。

市原 えつこ
「未来 SUSHI」2022
「未来 SUSHI」2022

ロボットが店員の未来の回転寿司。皮肉や未来への警鐘など社会性も織り込んだユーモア作品。

玉山 拓郎
「Something Black」2022

直線が支配する赤と黒の世界。居心地悪そう。人気のアーティストらしいですが正直ちょっと苦手なタイプのアートです。すぐ出たので何も記憶がありませんが、爆音やノイズが合いそうな雰囲気ですね。

石内 都
「Moving Away」シリーズの一部 2015-2018

長年活躍されているベテランの写真家さん。被写体の切り取りかたが独特で、日常に深く切り込んでいくイメージ。シリアスで重量を感じるタイプの写真が多い気がします。

呉 夏枝(オ・ハヂ)
「海鳥たちの庭」2022の一部

亜麻の布に日光写真の技法で画像を定着させた作品。海を越えて往来する人々の、それぞれの人生をそれぞれの記憶に基づいて想起させる場としての作品を目指しているとのこと。

石垣 克子
「瀬長島からの眺めⅢ」2021他展示風景

さまざまな歴史を背負いながら日々変化する沖縄の日常を、明るく素朴な画で表現した作品。南国感あふれる風景が広がっていますが、絵の端々からは様々な思いが湧き上がってきます。

伊庭 リンダ
「searchlight」2019-2022シリーズの一部

沖縄生まれ沖縄在住。4つの言語を使い分ける家庭で育ったとのこと。沖縄の日常を自身の角度で切り取ろうとする写真家さんです。

SIDE CORE / EVERYDAY HORIDAY SQUAD
「rode work ver. tokyo」2018/2022
「rode work ver. tokyo」2018/2022
「rode work ver. tokyo」2018/2022

「風景にノイズを起こす」がテーマ。工事現場のさまざまな機材を組み合わせて構成されるアート作品です。日常とアートの接点を探る試みとか、こういうガチャガチャした中の美っていうのは大好物なので楽しめました。

竹内 公太
「エビデンス」2020

震災後に福島の立ち入り制限区域内で警備員として働いた経歴をもつアーティストさん。除染作業で出た土を運ぶトラックを誘導する際に使用した赤いランプの警棒から着想を得て制作された作品です。

猪瀬 直哉
「Romantic Depression」2022他展示風景

写真のように見えますが絵画作品です。大自然の中にコンクリートなどの人工物をかなりインパクトのある形で登場させる作品です。不気味さや恐怖も感じますが同時に美しさも感じてしまう悲しい性。瀬戸大橋や高速道路の高架などを見たときに感じる似たような感情をより先鋭化させて表現した作品のように思います。

AKI INOMATA
「彫刻のつくりかた」2018 –
「彫刻のつくりかた」2018 –

動物園のビーバーにかじってもらった木片を、作家や彫刻家が3倍に大きくして複製したものが今回の作品です。この作品の作者は一体誰なんでしょうといういささか哲学的な問いが発生します。すごい作品のような気もするし、そうでない気も。いろいろ考えさせられる作品です。

青木 野枝
「core」シリーズ2022の一部
「core」シリーズ2022の一部
「core」シリーズ2022の一部

瀬戸芸でもお馴染みのアーティストさん。鉄とガラスでできた大きな球体。インパクトのある作品です。

※掲載の写真はすべて展覧会場で撮影させていただいたものです。

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